去る8月21日、東証がアクティブETF6本を上場承認したことがニュースになりました。
東証はこれまで指数などに連動したパッシブ(インデックス)ETFしか上場を認めてこなかったのですが、リターン拡大のために銘柄選定や運用をアクティブに行うETFの登場とあって注目を集めています。
そんなアクティブETFの代表格として、「JPモルガン・米国株式・プレミアム・インカムETF」【JEPI】が挙げられますが、このJEPIに投資するファンドがSBI岡三アセットマネジメントから登場しています。
米国株カバードコール戦略/JPM米国株式・プレミアム・インカムETF
本体のJEPIのことは後回しにして、ファンドの情報から調べてみたいと思います。
商品名 | 米国株カバードコール戦略/JPM米国株式・プレミアム・インカムETF |
商品分類 | 追加型投信/海外/株式・その他資産(投資信託証券(資産複合(株式一般、債券、その他債券))) |
決算頻度 | 年2回(6、12月の10日) |
為替ヘッジ | なし |
信託報酬 | 2023年7月5日から2024年6月10日まで 純資産総額×年率0.5348%程度 2024年6月11日以降 純資産総額×年率0.6998%程度 |
設定日 | 2023年7月5日 |
取扱販売会社 | SBI証券のみ |
ということで、以下がポイントとなります。
- 為替ヘッジなし
- 信託報酬は0.5348%程度。2024年6月から0.6998%程度に上がる
- 取り扱いはSBI証券のみ(2023年8月24日現在)
ETFがあるのに投資信託を利用することのメリット
当然、本体のETFであるJEPIに直接投資する方が手数料も安いのですが、
- 米国ETFなので、ドルで買わなくてはならない
- ETFの単価(8月25日現在で54.49ドル=約7,946円)が最低投資単価になる
- 株式同様、米国市場時間での取引になるので夜中の売買になる
- JEPIは毎月分配=毎月の分配金は課税されてしまい、再投資等は自分でやらないといけない
ということがデメリットでもあります。
それに対してこちらの投資信託を利用することのメリットとしては、
- 円で取引でき、少額からの積立が可能
- 毎月、毎週、毎日など自動積立の設定が可能
- 基準価額での取引になるので、夜中に起きている必要はない
- 月次報告書を日本語で読める
- 毎月の分配金を投信が再投資してくれる(課税されない)
高い配当率を得ることがJEPIへの投資理由にもなるところなので、特に最後の分配金の再投資が自動的に行われることで、複利効果が得られることのメリットが大きいように思います。
JEPIとの値動きを比較してみる
ここで、本体のJEPIとファンドの値動きを比較してみます。
JEPI終値【騰落率】 | ファンド基準価額(翌日)【騰落率】 | |
7/31 | 55.88 | 10,099円 |
8/1 | 55.57【-0.55%】 | 10,145円【+0.46%】 |
8/2 | 55.37【-0.36%】 | 10,126円【-0.19%】 |
8/3 | 55.30【-0.13%】 | 10,072円【-0.53%】 |
8/4 | 55.13【-0.31%】 | 9,959円【-1.12%】 |
8/7 | 55.62【+0.89%】 | 10,137円【+1.79%】 |
8/8 | 55.44【-0.32%】 | 10,133円【-0.04%】 |
8/9 | 55.35【-0.16%】 | 10,152円【+0.19%】 |
8/10 | 55.43【+0.14%】 | 祝日休場(8/11) |
8/11 | 55.52【+0.16%】 | 10,260円【+1.06%】 |
8/14 | 55.66【+0.25%】 | 10,318円【+0.57%】 |
8/15 | 55.13【-0.95%】 | 10,231円【-0.84%】 |
8/16 | 54.82【-0.56%】 | 10,229円【-0.02%】 |
8/17 | 54.51【-0.57%】 | 10,124円【-1.03%】 |
8/18 | 54.51【0.00%】 | 10,099円【-0.25%】 |
8/21 | 54.61【+0.18%】 | 10,180円【+0.80%】 |
8/22 | 54.51【-0.18%】 | 10,127円【-0.52%】 |
8/23 | 54.92【+0.75%】 | 10,138円【+0.11%】 |
8/24 | 54.49【-0.78%】 | 10,153円【+0.15%】 |
8/25 | 54.90【+0.75%】 | 10,250円【+0.96%】 |
JEPI本体の値動きに合わせて基準価額も動きますが、値動きの率は若干異なるようです。
また、JEPIの権利落ち日は8月1日で、1口あたり0.29ドルの分配金が8月4日に支払われています。8月1日のズレは、もしかするとこの関係かもしれません。
JEPI
このファンドが投資する対象のETF、JEPIについても簡単に。
正式には「JPMorgan Equity Premium Income ETF」。JEPIを運用するのはアメリカで高い運用実績を誇るJ.P.モルガン・アセット・マネジメント。
アクティブ運用するパッシブETFを代表する銘柄で、順当に純資産総額が推移しています。
運用戦略に、「ディフェンシブな銘柄を中心としたポートフォリオ」と「コールオプションの売り」を組み合わせる戦略とあるように、
- 約80%:S&P500採用銘柄を中心とした低ボラティリティ銘柄
- 最大20%:S&P500指数の1カ月のコールオプションプレミアム
という構成になっています。
この20%部分が最も大きな特徴となる、カバードコール戦略となります。
カバードコール戦略のメリット・デメリット
カバードコールとは、「株式などの原資産の保有」と「コールオプションの売り」を同時に行う投資手法で、以下のようなメリット・デメリットがあります。
「コールオプションの売り」=「決められた価格で買う権利の売却」で、オプション取引に馴染みがないとなかなか理解するのは難しいのですが、
- 保有する原資産(株式)の権利行使価格以上の値上がり益を放棄する
- その代わりに、オプションプレミアム収入を受け取る
というもので、株価があまり大きく上昇しない局面でも、コールオプションによるインカム収益を得ることを狙っています。
反対に言うと、株価が大きく上昇する局面においては値上がり益のすべてを享受できない、ということになります。
優位性
コールオプションによる高いインカムによって、年率利回りはS&P500のグロス配当利回りを大きく超え、国債やハイ・イールド社債と比べても優位にあります。
利回り比較
各資産の利回り
そして威力が発揮されるのは下落局面で、2022年に大きく下落したS&P500指数と比べて下げ幅が小さく抑えられており、下落局面に強くリスクコントロールに優れたETFであることがわかります。
また、高いインカムは毎月の配当。それを再投資することで複利効果による好リターンが期待できます。
JEPIとS&P500種指数の騰落率
トータルリターン(配当金再投資)の効果
他の投資と比べて横横のレンジ相場や調整局面でのメリットに優れていると言え、今後米国株が調整局面を迎える予測に立つと、投資してみても面白いかなと思っています。
懸念:JEPIのインカム(分配金)は下がっている
利回りが高いのは確かなのですが、経年で見てみると分配率は少し下がっています。
青いアンダーラインの月は前年同月と比べて下回っています。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
2020 | 0.4941 | 0.2898 | 0.4534 | 0.4348 | 0.5150 | 0.4999 | ||||||
2021 | 0.5428 | 0.2626 | 0.3211 | 0.3483 | 0.3737 | 0.3135 | 0.3954 | 0.2572 | 0.3388 | 0.3434 | 0.3661 | 0.3825 |
2022 | 0.4586 | 0.3818 | 0.4623 | 0.5878 | 0.4681 | 0.5164 | 0.6210 | 0.4955 | 0.5589 | 0.4808 | 0.6063 | 0.6104 |
2023 | 0.5729 | 0.4439 | 0.4112 | 0.4451 | 0.4246 | 0.3654 | 0.3593 | 0.2904 |
2021年後半、同様に2023年3月からのS&P500上昇局面において分配金が低いことが分かります。
カバードコールの傾向として、ボラティリティへの相関が見られます。
そのため、恐怖指数と呼ばれる【VIX】が高い(=心理悪化)と分配金は増え、低い(=心理好転)と減るようです。目安としてはVIXが25を上回ると分配金が多くなります。
この先S&P500の相場が冷えると…。JEPIの分配金が多くなることが期待されます。
以上、高配当と指数下落時のリスクヘッジが魅力なJEPIに投資するファンド、米国株カバードコール戦略/JPM米国株式・プレミアム・インカムETFのご紹介でした。
あくまでメインはオール・カントリーやS&P500で、サテライトとしての運用が良いと思いますが、直接JEPIを購入する場合のドル調達や購入単位金額、分配金の再投資の手間を解決できるものとして有効そうですし、どんなパフォーマンスになるのか興味があるので私は毎月8,000円(JEPI約1口分)を積み立ててみようと思います。