米国株への投資では、個別株よりETFを活用している方が多いと思います。
上場企業6,000、ETFも2,000に上る中で「何に投資すれば?」、さらには「今投資すべきお宝銘柄は?」となること必定ですが、中でも注目を集めているのが高配当ETFです。
その中でも「利回りが高い」「投資単価が安い」というメリットから人気なのがSPYD。
金融不安がうごめくなか目下調整中で、いい感じのラインまで価格が落ちてきました。
さて、今買って良いのか?
他の代表的な高配当ETFとの比較とともに、考察してみます。
高配当ETF御三家
指数に連動したり業種・セクターで固めていたりと様々な種類があるETF(上場投資信託)ですが、複数銘柄を組み入れているため分散投資となり、リスクを抑えつつカバーできる範囲が広いのが特長です。
そんなETFの中でも根強い人気を誇るのが、高配当銘柄で構成された高配当ETF。
その御三家といえるのがこちらの3商品です。
- VYM (Vanguard High Dividend Yield ETF)
- HDV (iShares Core High Dividend ETF)
- SPYD (SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF)
ETFの特徴比較
同じ「高配当」でも特徴の違いがあります。
参考までに、S&P500高配当貴族指数をベンチマークとするSDYも掲載しておきます。こちらも、御三家同様にメジャーなもの(純資産総額が物語っています)となっています。
価格 | 経費率 | 配当利回り | 純資産総額 (百万USドル) | |
VYM | 101.70 | 0.06% | 3.26% | 49,240.34 |
HDV | 98.40 | 0.08% | 4.10% | 11,413.15 |
SPYD | 36.13 | 0.07% | 4.79% | 7,044.35 |
SDY | 119.51 | 0.35% | 2.65% | 23,370.27 |
価格を見るとSPYDは約36ドルと、一つだけ単価が安いので投資のしやすさというメリットがあります。
配当を獲得できる権利月はどれも3月・6月・9月・12月の年4回ですが、価格や配当利回り以上に構成銘柄の考え方が違うことに留意です。
連動指数 | 特徴 | |
VYM | FTSE高配当指数 | 米国大型株から、 ・配当利回りが高い440銘柄 |
HDV | モーニングスター配当フォーカス指数 | 米国株から、 ・財務健全性が高く ・配当利回りが高い75銘柄 |
SPYD | S&P500高配当指数 | S&P 500の中から、 ・配当利回りが高い80銘柄 ・この80銘柄に均等投資 |
SDY | S&P500高配当貴族指数 | S&P全体から、 ・配当利回りが最も高く ・25年連続で増配している 60銘柄で構成 |
騰落率の比較
次に、直近の騰落率を比較してみます。
年初来 騰落率 | 騰落率 (1ヶ月) | 騰落率 (3ヶ月) | 騰落率 (6ヶ月) | 騰落率 (1年) | 騰落率 (3年) | 騰落率 (5年) | |
VYM | -5.72% | -5.45% | -5.75% | 5.39% | -6.08% | 82.47% | 47.96% |
HDV | -5.52% | -3.36% | -5.55% | 6.00% | -3.70% | 78.58% | 43.02% |
SPYD | -8.40% | -10.60% | -8.47% | -0.59% | -13.03% | 95.45% | 31.10% |
SDY | -4.73% | -5.92% | -5.12% | 3.97% | -3.27% | 88.03% | 53.62% |
どの商品も高配当=金融やヘルスケア、エネルギーなどのセクターに偏るということで年初来・直近1ヶ月では大きくダメージを受けていますが、SPYD以外は6ヶ月間の比較で見るとプラスの圏内にいます。
VYMが440銘柄と最も分散が効いているので、こちらを基準にHDV・SPYDを見ると掴みやすくなるかと思います。
経費率が高いSDYがもっと安定しているかと思ったらそうでもないので、あえてこちらに投資する必然性は無いかなというのが個人的な所感です。
なお、これらのETFはつみたてNISAでは買えなく、一般NISAか一般/特定口座での取引となります。
VYMは楽天証券・SBI証券から投資信託も販売されており、こちらで投資することもできますが、手数料は直接ETFに投資するのと比べると割高です。
VYMに投資する投資信託として、下記2本をご紹介します。
投資信託のメリットとしては、「毎月定額で積み立てられる」ということが大きいです。
ETFは現値そのままで買うしかなく、投資信託の定額積み立てであれば毎月決まった日に機械的に購入し続けるので、値段を常に注視することもないので投資に時間を割けない方にとってはメリットとなります。
信託報酬率 | 純資産 (百万円) | |
楽天VYM 楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド | 0.192% | 11,535 |
SBI・VYM SBI・V・米国高配当株式インデックス・ファンド | 0.1238% | 20,312 |
SBIの方が信託報酬率が低いので投資するならこちらなのですが、取り扱いがSBI証券のみとなっています。
そのため、楽天証券にNISA口座を持っていて、NISA口座で投資信託したい場合は楽天VYM一択となります。(私自身がそのクチです)
SPYDの現況は
さて、今回のテーマのSPYD。
上記で述べた通り「利回りが高い」「投資単価が安い」というメリットがありますが、ここ数週間の金融不安に押され目下調整局面に入っています。
それもそのはず、SPYDの構成銘柄は不動産・金融セクター中心で、まさに「食らっている」状況にあります。
また、昨年が絶好調だったこともあり、配当金額自体は昨年より目減りしました。
チャート
昨年6月、7月と12月の安値で下値になると見ていた38.6ドルを下抜け、3月24日には35.26ドルの安値を付けました。
その後終値では36.11ドルまで上げはしたのですが、ここが底になるのかどうか…?
配当履歴
2020年からの配当金額を並べると以下のとおりです。
昨年2022年は大きなインカムゲインが得られました。
1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 | |
2020 | 0.3961 | 0.3657 | 0.2635 | 0.6066 | 1.6320 |
2021 | 0.6361 | 0.3989 | 0.3865 | 0.1275 | 1.5492 |
2022 | 0.6527 | 0.4049 | 0.4183 | 0.5072 | 1.9833 |
2023 | 0.3874 |
構成セクター
組み入れ銘柄の構成セクターについて、2023年3月の現時点と2022年末を比べると以下のようになります。
2023年3月現在 | 2022年12月末時点 | |||
不動産 | 21.04% | 1 | 金融 | 21.41% |
金融 | 17.43% | 2 | 公益事業 | 15.30% |
公益事業 | 13.53% | 3 | 不動産 | 14.11% |
一般消費財 | 9.49% | 4 | エネルギー | 10.37% |
生活必需品 | 8.13% | 5 | 生活必需品 | 8.06% |
素材 | 8.04% | 6 | ヘルスケア | 7.50% |
コミュニケーション | 7.04% | 7 | コミュニケーション | 6.20% |
エネルギー | 5.05% | 8 | 素材 | 5.88% |
情報技術 | 4.09% | 9 | 一般消費財 | 5.43% |
ヘルスケア | 3.65% | 10 | 情報技術 | 4.61% |
資本財 | 2.51% | 11 | 資本財 | 1.14% |
結構ダイナミックに変わるんだな~という印象です。
今買って良いのか?
個人的に購入検討ラインとしていた38.60ドルをあっさり割ったこともあり、
- ここまで下がってきたら買ってもいいなぁ
- 利回り高いのはやっぱり魅力だよなぁ
- でも、シリコンバレー銀行(SVB)、クレディ・スイス、そしてドイツ銀行と立て続けに金融セクターの不安材料が報じられる中で、「まだあるんじゃないの?」疑念が拭えない…
という思念が行ったり来たりする毎日です。
今になるとラインで置いていた38.6ドルで飛びつかないで良かったのですが、SVBもクレディ・スイスも個別の問題、ドイツ銀行に至っては問題すらないと努めて冷静に捉えると、買いに行っても良い局面なのかも、と。
私はこのように方針立てしようと思います。
おまけ
蛇足ですが、私の取引実績を最後に。
本格的に投資を始めた昨年秋に1株だけ試しに買っており、先日売却しています。
購入価格 | 売却価格 | 損益 |
37.20ドル (2022.10.19) | 41.85ドル (2023.1.30) | +4.65ドル +12.5% |
まだ良く分かっていない中での購入だったので完全にラッキーパンチですが、年末に向けて上昇していく波にうまく乗れ、12月中旬の下落もホールド、配当を受け取って「このあたりでいいかな」というタイミングでの売却でした。(1株ですが 苦笑)